医学生のみなさまへ

① これから医師になる皆様へ

皆様、学生生活を謳歌してますでしょうか。私も学生時代は勉強に部活に遊びに恋愛にと忙しい毎日を過ごし、今でも非常にいい思い出です。しかし、楽しい学生生活の先には医師としての人生が待っています。医師になる動機は人それぞれですが、いずれにせよ皆様の大部分が医師としての生活をスタートします。皆さんが飛び込む世界は今までの医療界とは違った状況になってきています。高齢者の割合が急速な勢いで増加し、もちろん患者さんの疾患は一つにとどまらず複合疾患をもち複雑性が増しています。高度な先進医療のみを行うことが正しいとも限らない状況もたくさんあります。今まではSpecialistによる専門医療のみでもなんとかなりましたが明らかに高齢者の割合に対してSpecialistは不足します。この危機的な状況をどう打開するか。それはGeneral mindを持ったSpecialistが増え、Generalistが福島の医療に根付くことが重要だと思っています。General mind を持ったSpecialistが増えることで従来通りの専門医療はもちろんのこと、自分の専門以外は診ることはできないと門前払いをすることがなくなり早期に適切な診療科につなぐことができます。General mindとは自分の専門以外の診療領域に対しても興味をもちできるだけ診療の幅を広げようとする心意気のことをいいます。また、Generalistが増えることで地域医療の弱点を補うことができます。福島はただでさえ医師不足ですから地方の病院にSpecialistを十分に配置することは不可能でしょう。そこでGeneralistが自分でできる範囲は診療し、高度に専門性が必要となる場合のみSpecialistにつなげることで地方においても十分に診療を行うことが可能になりSpecialistの疲弊も防ぐことができます。以上よりこれから医師になる皆さまにはSpecialistになる場合でもぜひGeneral mindを持っていただきたいと思っています。そうすることでこの福島が、そして日本が変わります。私はここに無限の可能性があると感じています。だからこそGeneral mindを学生のうちの培って欲しいのです!そして、もし興味がある人は総合内科医として一緒に働ければいいなと思っています!これから一緒にGeneral mindを学んでいきましょう!事項に私なりに学生時代にできることを記載いたしますので参考にしてください。

 

②学生のうちにできること

1) 鑑別診断を考えながら問診をする!

学生の頃は系統学習をして、疾患の知識は増えていきますがなかなか症候から鑑別診断を考えながら問診する機会がありません。しかし、実際の臨床の現場では自分で鑑別診断を考えることができなければ診断もできず、重症な疾患を除外することもできません。したがって、まず鑑別診断を症候からcommonな疾患を3つ、Criticalな疾患を3つ程度あげられるようになりましょう。そして、実習の時はその鑑別診断にしたがって積極的に患者さんに話を聞いていただければと思います。もし、新しい患者さんがいなければ入院患者さんに今回の入院の契機を問診してみれば良いかと思います。この時は先輩医師のカルテは参考にはせず、自分自身で病歴をとってみることが重要です。ここで先輩医師が見落としている新しい問題点や解決口が見つかるかもしれません。前医の言っていることは鵜呑みにしてはならないのです。ぜひ自分で鑑別診断を考えながら問診をしてみてください。

2) Pertinent negative historyを聴取できるようになる!

Pertinent negative historyとは端的に言えば陰性症状のことです。例えば呼吸困難で来院した患者さんに対し、起座呼吸、夜間発作性呼吸困難、体重増加、浮腫の出現などの有無を聞き、これらが陰性であれば心不全の可能性が下がります。これらのような病歴をPertinent negative historyと言います。鑑別に上がった疾患の上記病歴を積極的に聞きにいくことで検査前確率を設定することができます。学生時代からぜひこのPertinent negative historyの引き出しを増やす努力をしてもらえればと思います。これらは実際研修医になってから救急外来ですぐに威力を発揮するためぜひ勉強して欲しいと思います。

3) Presentationのお作法を身につける!

Classicalなfull presentationはOpening statement、現病歴、既往歴、服薬歴、社会歴、家族歴、身体所見、検査、プロブレムリスト、アセスメント、プランというような内容になっており、お作法が存在します。こちらのお作法をぜひ病歴をとった患者さんで実践し、学生のうちに身につけることができれば有意義な研修医生活を送ることができることは間違いなしです。詳細なPresentationのポイントについては割愛します。

Off-the-job編

1) 臨床推論の勉強会に参加してみる!

現在、私たちは福島県立医科大学4、5年生の有志の学生に対し、臨床推論の勉強会を開催しています。2週間に1回程度行い、毎回10~20人程度の学生が参加してくれています。そこでは主訴と簡単な現病歴から鑑別診断を考えて、病歴を追加で聴取し、私たちが答えていくというものです。実際に私たちが経験した症例をベースに行いますのでできるだけ臨床現場に即して行なっております。このような勉強会を双方向性で行うことで教育効果をあげ、そして同期や後輩と学ぶことで切磋琢磨しあうことが可能となります。私が沖縄で受けたトレーニングをベースに行なっていますが、学生たちは研修医に負けず劣らずにやってくれているので非常に楽しいです。もうすぐ開始して1年になりますが最初から参加している方は本当によく成長されて、とても頼もしくなっています。もし興味がある方は一緒に参加していただき、勉強してもらえると実際の内容がわかるのではないかと思います。ぜひ参加をお待ちしています!

2) FACEや県外の勉強会に参加してみて、モチベーションの高い仲間と勉強してみる!

福島県にはFACE(Fukushima Advanced Course by Experts)という県外から講師を招聘し泊まりがけで行う勉強会があります。内容が充実しており県内外からモチベーションの高い学生や研修医が集まるのでとてもオススメです。また、県外でも多数勉強会が存在しており、こちらにも参加してみると世界が広がります。実際、私の研修先は全国から研修医が集まってくるようなところだったので非常に魅力的な人が多く、たくさんのことを仲間から学ぶことができました。仲間の輪を広げるということも有用な手段かと思います。

 

以上、様々書いてきましたがまだまだ書ききれないことがたくさんあります。さらに様々知りたい方はぜひ福島医大総合内科に足を運んでください!後悔はさせません!一緒にGeneralの道を切り開いていきましょう!

會田 哲朗