あいさつ

2016年10月から福島県立医科大学に総合内科(General Internal Medicine: GIM)が新設されました。福島県立医科大学附属病院においては不明熱などの診断困難例の診療や横断的分野である感染症診療などに従事し、ハイレベルな高度専門医療をおこなう大学病院の医療をさらに隙間のないものにするべく努力していきたいと考えます。また同時に医学・研修教育を通じて、総合内科医の育成とともに総合内科的な能力をもつスペシャリストの強化を目標に大学に貢献していきたいと考えます。

総合内科の目指すもの

1.スペシャリストのための総合内科 -すそ野が広ければ高くなれる-

医科大学の部門として、大学病院の診療科として、「総合内科医の育成と、総合内科的な能力をもつスペシャリストの強化」を目標に掲げました。

福島県立医科大学の各内科専門科にはスペシャリストでありながら一般内科の広い分野にも対応できる医師たちが多くおられます。総合内科ではそれをさらに強化し、また総合内科医だけでなく、各内科専門医を目指す若手医師の育成にも深く貢献したいと考えております。

超高齢社会を反映して、将来内科医はスペシャリストであっても病院や地域のニーズから自分の専門外も含めた広い内科診療を行わなければならない状況にあります。このような状況に対応するためには自分の専門分野をしっかり持った上で一般診療も行える医師の養成が必要になります。

 

2.ジェネラリストのための総合内科 ―総合内科よ、お前もか―

実は総合内科学は専門分野であり総合内科医もスペシャリストであると考えております。

総合内科医は、特に一般病院の入院医療を得意とし、高齢社会を迎えそのニーズがますます増えてきております。一方で総合内科学の魅力は病歴情報と身体所見からの臨床推論を経て病態にせまりマネージメントを行っていくスタイルにあり、そのような思考過程を熟知し日常診療に使用するスペシャリストなのです。

また総合内科医には診療の場に応じて自分の診療スタイルを変化させるという特徴があります。例えば大学病院という場では、各専門科の隙間にある問題や感染症などの横断的問題に対応します。一方で市中病院、特に中小規模病院ではメインの内科診療科として広く内科疾患や救急疾患に対応することになります。形を変えることによってどのような場であっても病院全体の医療に深く貢献することを目指しております。またこの「形を変える能力」の育成にも携わります。

 

3.双葉地域の医療支援 ―知識は力なり―

原発周辺の医療に携わると同時に、放射能物質の影響に対するしっかりした知識をもつ総合内科医の育成に力を入れます。

福島第一原発と同様の事故が日本の別の場所でおこる可能性もあり、対岸の火事ではすまされない懸念があります。そこで原発事故への対応や放射能物質の影響などを熟知した医師の育成も必要になると考えております。そしてこのような医師の育成は現在福島でしか行えないという状況になっております。まさにピンチから生まれたチャンスと言えるでしょう。

 

4.臨床研究と総合内科 ―まだまだある総合内科の伸びしろ―

総合内科は臨床研究をとおして現場での臨床能力をさらに一段高いところに向上させる考えをもっております。実は臨床研究はエビデンスを生み出すだけでなく、その研究をおこなった臨床医個人の日常診療の能力を向上させ、診療の幅を広げることにつながるのです。その理由は現場で起こる疑問の中には研究デザインを思い浮かべるだけで、それをどの程度証明できるかがあらかじめ予想がついてしまうものがあるからです。研究を武器にすると臨床の武器が増えます!

臨床医は臨床を行えばよい、研究は研究者がおこなうものだ、という考えがあります。ところが臨床医が臨床研究をおこなうと、こんなにも臨床が楽になり幅が出てくるということを多くの医師や若手医師にも実感していただくべく努力しております。