総合内科の理念

「総合内科」を言葉で分かりやすく表現することはまだできておりません。現代は後でできた新しいものほど言葉で定義することを要求されます。しかし「内科」や「外科」は言葉が先ではなく、人がおこなってきたpracticeからの概念が先で、後で言葉の定義がなされたはずです。

我々もこの福島、そして東北地方で、我々の地道な活動をつづけることで、「総合内科」というものの概念や意味が皆様に理解いただけるようにがんばってまいります。

そしてその活動を通じて、内科を志すすべての医師が総合内科的な基礎力を身に着けるようになれば、現在すでにある内科医全体の臨床力がさらに向上するのではないかと思っております。我々はこれを医師を生み出す大学病院でおこなうことができる、と固く信じております。

 

Simon Sinekの”Golden Circle理論” *を使って総合内科の理念を描きます。

Why(きっとできると信じていること)

「大学病院を通じてすべての内科医の臨床力を向上させる」

How(Whyを達成するためにどのように考えていくか)

  1. 教育から:教育を通じた広くて深い内科学の自己研鑽をする
    Clinical Self-discipline
  2. 研究から:臨床研究を通して臨床能力を向上させる
    Academic GIM
  3. 臨床から:ニーズに応じて自分を変化させる能力を向上させる
    Needs-based Practice

What(その結果としておこなうことになったのはどのようなことか)

  1. Clinical Self-discipline

    • Subspecialtyを重視した内科学教育(研修医、学生)
      総合内科学の基礎を十分踏まえた専門医の育成
    • 研修病院での総合内科指導
      大学病院と連携した臨床教育
    • 総合内科学フェローシップ
      Whyを達成する指導者となれるような医師の育成プログラム
    • Radiation-related Internal Medicine(RIM)
      世界から注目される放射能知識をもった総合内科医の育成
  2. Academic GIM

    • 臨床研究の基礎学習
      臨床医が研究を行うために必要な知識と技術のトレーニング
    • 臨床研究と臨床能力の研究
      研究をすることで臨床能力が向上することに関する研究
    • 多施設共同、地域ベース研究
      臨床研究の実践
  3. Needs-based practice

    • 双葉地区支援事業
      ハンディを背負った地域の医療支援
    • University Hospital Medicine
      高度専門医療機関での臨床
    • 地域中核病院での診療
      Hospitalistとしての実践

「患者さんのための医療」は我々が信じていることを達成した結果、必ず生まれてくるもの、つまり「結果(result)」であって、すべての医療者の共通した目的意識なので、我々の直接のWhyにあえて置いておりません。

 

* Simon Sinekの”Golden Circle理論”(TED 2009)
People don’t buy what you do; people buy why you do it.
人は最終的にもたらされる産物(what you do)ではなく、それを生み出す理由(why you do it)に惹かれる。例としてApple社のiPhoneよりもスペックがよいものがあるが、人はApple社の思想(世界を変えることができると信じている)に惹かれ、そのApple社が生み出したproductはスペックが他のものよりも悪くても発売日には長蛇の列ができる。
我々は○○ということを固く信じている、そのためにここにいる、というWhyの概念(we believe)からものごとを考え、常にそれを組織に中心に置くことが大切であるということ。