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原因不明の大量腹水で発症したIgG4関連腹膜炎の1例【症例】2型糖尿病やリウマチ性多発筋痛症の既往のある72歳男性。 【現病歴】当科初診の3ヶ月前より倦怠感と水様下痢が出現、1ヶ月前にはかかりつけのクリニックから近医に紹介となった。大量腹水と、下部消化管内視鏡検査で上行結腸に全周性の腫瘤性病変を認めたため、上行結腸癌、癌性腹膜炎が疑われたが、腹水細胞診や上行結腸生検から悪性所見は得られず、精査目的に当科に紹介となった。発熱なく、腹部は軽度膨隆し下腹部正中に硬い腫瘤を触知し圧痛があり、CT検査では胸腹水の貯留と腸管壁肥厚、腸間膜の結節性病変を認めた。アミロイドーシスや結核性腹膜炎、腹膜中皮腫なども鑑別にあげたが、血液検査でIgG4、IgEが高値であったことからIgG4関連疾患を強く疑った。腹腔鏡下腹膜生検でIgG4陽性の形質細胞を多数認め、IgG4関連腹膜炎と診断した。プレドニゾロン50mg/dayで治療を開始したところ腹部所見は速やかに改善し、独歩で退院、現在は外来でステロイドを漸減中だが症状の再燃はない。【考察】IgG4関連疾患は、組織にIgG4陽性形質細胞・リンパ球が浸潤し、諸臓器に線維化や腫瘤形成、腫大や肥厚性病変を呈する疾患で、稀ではあるが本症例のように腹膜炎や硬化性腸間膜炎などをきたすこともある。原因不明の大量腹水の鑑別としてIgG4関連腹膜炎の可能性も検討すべきと学んだ。 |