業績
2019/10/16

第68回日本感染症学会東日本地方会学術集会一般演題

中本洋平医師が、第68回日本感染症学会東日本地方会学術集会で一般演題発表(口演発表)を行いました。

開腹手術7ヶ月後に発症したVPシャント感染症の一例

【現病歴】症例は66歳女性。39年前、小脳出血後の水頭症に対して脳室腹腔(VP)シャントが造設された。7ヶ月前にS状結腸穿孔による腹膜炎を呈し開腹手術が行われたがVPシャントはそのまま留置された。入院4日前から発熱と倦怠感が出現し、入院当日には体動困難となり当院へ救急搬送された。搬送時に頻回な嘔吐を認め、ウイルス性胃腸炎疑いとして救急科へ経過観察入院となった。しかし入院後も症状の改善がなく、入院4日目に原因精査目的で当科紹介となった。診察時に頭痛の訴えはなかったが身体所見で項部硬直を認め、血液検査では低ナトリウム血症を認めた。VPシャント留置術や腹部手術から長期間経過していたが、VPシャント感染症を疑った。髄液のグラム染色では多数の多核白血球と複数の細菌を認め、VPシャント感染症と診断した。シャントを外瘻化した上でメロペネムとリネゾリドによる治療を開始した結果、症状は改善傾向となった。髄液培養ではEnterococcus faecalisのみが培養されたが、過去の二次性腹膜炎による汚染がVPシャント感染症の原因と診断した。

【考察】腹部手術はシャント感染症の原因となり得るが、長期間経過した後に発症することはまれである。 また、髄液シャント感染症はシャントに関連しない細菌性髄膜炎と比較して頭痛などの髄膜炎に特徴的な症状が乏しい。これら要因が重なり本症例の診断を困難にさせたと考えられた。

 

主催 日本感染症学会
メンバー 中本洋平
日程 2019/10/16
場所 仙台国際センター