業績
2020.2.21

2020.2.21 第20回日本病院総合診療医学会総会

主催 日本病院総合診療医学会
メンバー 會田哲朗
内容 皮膚形質細胞増多症が先行した 特発性多中心性キャッスルマン病に対しトシリズマブが奏功した一例 【抄録】【症例】45歳女性 【主訴】発熱、皮疹 【既往歴】皮膚形質細胞増多症 【現病歴】1年半前より前額部と胸部に多発する茶褐色の皮疹を認めていた。半年前より皮疹が増悪したため皮膚科を受診し皮膚生検にて皮膚形質細胞増多症の診断となりステロイド軟膏塗布と光線療法が施行された。しかし皮膚症状の改善はなく、1ヶ月前より微熱、倦怠感、体重減少が生じ、1週間前より高熱が出現し紹介受診した。 【身体所見】10mm大の茶褐色の皮疹を前額部、胸部、腹部、背部、四肢の皮膚に認めた。また頚部、腋窩、鼠径部に2cm大の有痛性リンパ節腫脹を認めた。 【検査結果】血液検査で貧血、肝酵素上昇、高γグロブリン血症、炎症反応上昇、IL-6の上昇を認めた。HHV-8 DNA、HIV抗原抗体は陰性であった。造影CTでは表在リンパ節の腫脹、脾腫を認めた。鼠径リンパ節生検ではびまん性の多クローン性成熟形質細胞の増殖があり、骨髄生検、皮膚生検でも同様の所見を認めた。 【経過】発熱などの全身症状と皮膚所見、リンパ節生検所見から特発性多中心性キャッスルマン病iMCD(形質細胞型)と診断した。プレドニゾロンを開始し症状、炎症反応は改善していったが皮膚所見は完全に改善しなかった。ステロイドの減量に伴い、次第に炎症反応が上昇し皮疹も増悪したため、治療開始6ヶ月後よりトシリズマブを開始したところ速やかに皮疹は消失し炎症反応も改善した。 【考察】iMCDはHHV-8、HIV感染のない発熱などの全身症状と末梢リンパ節腫脹を特徴とする稀なリンパ増殖性疾患である。皮膚形質細胞増多症が先行することがあり、過去11例の報告では先行期間の中央値は約7.5年であるが、本症例は1.5年と極めて短期間で発症した。皮膚形質細胞増多症の患者では近い将来のiMCDへの移行に注意すべきである。また皮膚症状が先行するiMCDでもトシリズマブが主治療薬である可能性が示唆された。
日程 2020.2.21
場所 ヒルトン福岡シーホーク